次期主力製品の開発が、若手技術者を主軸にしたプロジェクトチームに託された。2016年初夏、設計開発は動き始めた。新機種開発の目的は大別すれば2つ。プラスチック射出成形機の操作性をスマートフォンやタブレット端末を参考に、格段に向上させること。そして、機構面においてすでに市場に送り出した機種の優れた点を見直し、再導入を図ることである。そのうえでこのプロジェクトを通じて、TOYOが連綿と受け継いできた技術力を若手エンジニアたちに承継するという、もう1つの目的もあった。

精鋭、9人のサムライたち


開発リーダーは語る。
「設計開発ではある程度、若手メンバーの自由に任せました。要所要所で軌道修正を行ったり、助言しましたが、基本的には若い技術者たちに新しいアイデアを出させ合い、容易ではない開発にあたらせ技術的に鍛えられるように心がけました。」
チームを構成するのは、機械、電気、制御システム系の各工学を専門とする「9人のサムライたち」で、彼らは試行錯誤を重ねながら設計開発に取り組み、自らのスキルアップを図った。

指示を受けるのではなく、自ら考え、実行


「このプロジェクトに参加して、設計開発の醍醐味をまるごと味わうことができました。主に開発機器のCAE解析を担当しましたが、今まで上司や先輩からの指示で仕事を受けていたのとは違い、自分で解析の方法を考え、判断、実行することを学びました」。若手の1人は、与えられたミッションへの感想をこう述べる。 彼が担当するCAE解析とは、コンピュータを活用して製品の設計や製造、工程設計の事前検討をサポートすること。3Dモデルを用い、成形機のどこに応力によるたわみ、負荷が生じるかなどを検出し、設計に貢献した。 「使用される部品1つ1つがどのような役割を持つかなど、開発する成形機のことを深く知ることができたのが収穫。次へのステップとするための技術者としての引き出しを増やすことができました」。そう言って爽やかな笑顔を見せた。

提案力を鍛えられ、技術者としてジャンプ!


各種プラスチック射出成形品の高速成形&高精度射出を実現することはもちろん、省エネルギーとエコロジー性能を向上させ、計量密度の安定化を追求し、しかも業界最小クラスのマシンの省スペース化に貢献する使命を帯びているのが、中堅社員が担当する電気回路、および連携する制御システム設計(ソフトウエア)。「これまでのTOYOの技術データベースにはない、まったく未知の領域を手探りで開発していくプロジェクト。良いアイデアのヒントがどこにあるのか、チームのメンバーが思いついたことをぶつけ合うブレーンストーミングを行うなど、既成のモノづくりの型にとらわれない斬新な開発スタイルが取り入れられたのは、若手技術者が中心だったから」。彼はこのプロジェクトを通じて、提案力を大いに鍛えられたという。


図面を引くことから始まる「壮大なシンフォニー」


プロジェクトに取り組むメンバーたちは、どこにやりがいを見出しているのか。「やっぱり、今まで存在しなかった産業機械を、自らが図面を引いてゼロから生み出せることに尽きます」と開発リーダーが答えると、メンバーは異口同音に明快に語る。「モノづくりを担うあらゆる産業界に私たちが作り出したオンリーワンの成形機を提供し、社会に貢献できることです」と。その製品は国内のみならず、文字どおり世界中の国々・地域で活躍している。